大判例

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東京地方裁判所 昭和32年(ワ)569号 判決

証拠を総合すれば、次の事実が認められるすなわち、昭和三一年一二月一日頃当時の被告会社代表取締役山仲淳一は原告に対し額面金二十万円、支払期日同月十一日なる約束手形一通を振り出していたが、同月七日頃右山仲淳一が死亡してしまつたので、原告は弁護士池田淳に右約束手形の取立方を依頼した。同弁護士は原告の妻とともに前記支払期日に被告会社に赴いてその支払方を請求したが、当時被告会社の後任代表取締役には淳一の妻被告山仲もよ子が予定せられていたところ未だ所定の手続を了しないまま被告会社の事務処理は事実上右もよ子より監査役の訴外成瀬庫太郎が一切を委されていた。そこで右成瀬は、池田弁護士の請求に対し、金十万円だけは被告会社の工事代金を取りたててこれを支払つたが、残額金十万円の支払ができなかつたので、被告会社取締役らの協議の上、右金額については別に書替手形を差し入れることとし、被告会社の記名印代表者印、等を使用して、右池田淳を名宛人とし被告会社取締役社長山仲淳一振出名義で額面金十万円支払期日同月二十四日なる約束手形一通を作成して池田弁護士に交付した。その際成瀬は、池田弁護士から死亡後の代表者振出名義の約束手形の効力について疑義を指摘され、且つ後任代表者となるべき被告山仲もよ子をも振出人名義とすることを求められたので、被告山仲もよ子に対し同被告が個人で手形上の責任を負うべきことの承認を得ることもなく、被告会社庶務係事務員をして右手形面の山仲淳一記名の側に被告山仲もよ子の氏名を併記させその名下に被告会社代表者職印を押捺させたものである。

以上のとおり認められるのであつて、これら認定の事実よりすれば、成瀬が右約束手形を作成した当時、その振出人名義とした被告会社代表者山仲淳一は既に死亡しており、代表取締役は欠員となつていたのであるから、成瀬において右代表者の署名(記名捺印)を代行し得べき理由はなく、該振出行為は無効であり、従つて被告会社は右振出行為に基く手形上の責任を負わないものといわなければならない。また、被告山仲もよ子の記名捺印は、前記のように同被告個人振出名義としてなされたものではなく、また成瀬において同被告から個人として右約束手形を振り出すことの代理権限を賦与されていたものでもないから、同被告も右手形上の責任を負わないものというべきであるとしてこれを棄却した。

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